自閉スペクトラム障害(ASD)
と注意欠如・多動性障害(ADHD)の違いについて説明します。
どちらも発達障害のカテゴリーに属しますが、
その特性や現れ方には明確な違いがあります。
ただし、ASDとADHDが併存するケースも少なくないため、
個人によっては両方の特徴が混在することもあります。
以下に、主な違いを分かりやすくまとめます。
1. 中心的な特性
ASD(自閉スペクトラム障害)
社会性やコミュニケーションの困難が中心。
他者との相互作用が苦手、表情や
ジェスチャーの理解が難しい、友達を作るのが苦手など。
限定された興味や反復行動が特徴。
特定のトピックに異常なほど没頭する、
ルーティンを好む、同じ動作を繰り返すなど。
感覚過敏や鈍感(音、光、触覚などへの異常反応)が見られることも多い。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
注意力の持続困難、多動性、衝動性が中心。
集中力が続かない、じっとしていられない、
順番を待てない、衝動的に行動するなど。
社会性やコミュニケーションそのものに問題があるわけではなく、
衝動性や注意力の欠如が対人関係に影響を与えることが多い。
2. 社会的相互作用
ASD
他者との関わりを「理解する」こと自体が難しい。
例: 相手の気持ちを察するのが苦手、会話のキャッチボールがうまくいかない。
孤立を好むか、関わり方が独特(積極奇異型など)。
ADHD
他者と関わりたい気持ちはあるが、
衝動性や注意力の欠如が邪魔をする。
例: 話をさえぎる、ルールを守れない、落ち着いて聞けない。
社交的だが「空気を読まない」印象を与えることが多い。
3. 行動パターン
ASD
規則性や予測可能性を求める傾向。
変化を嫌い、同じパターンを繰り返す(例: 同じ道を通る、同じ服を着る)。
特定の興味に深く没頭し、他のことは無視する傾向。
ADHD
衝動的で予測不可能な行動が多い。
気分や状況に応じて行動がコロコロ変わる
(例: 突然立ち上がる、物を触りまくる)。
興味があっても集中が続かず、すぐに飽きてしまう。
4. 感覚処理
ASD
感覚過敏や鈍感が顕著。
例: 騒音に耐えられない、
特定の服の感触が嫌い、逆に痛みに鈍感など。
ADHD
感覚処理の問題はあまり特徴的ではない。
ただし、多動性から「刺激を求める」
行動(例: 動き回る、物を触る)が目立つ。
5. 認知・学習スタイル
ASD
細部にこだわる「部分指向型」の認知スタイル。
例: パズルのピースには詳しいが全体像を見られない、
特定の分野で天才的な能力を発揮する。
ルールや事実を重視し、柔軟性に欠けることがある。
ADHD
注意が散漫で「全体をざっくり捉える」傾向。
例: 細かい指示を忘れる、タスクの優先順位をつけられない。
柔軟性はあるが、計画性や持続性に欠ける。
6. 併存の可能性
ASDとADHDは別々の障害ですが、
約30~50%の人が両方の特徴を持つとされています(研究による)。
例: ASDの人は特定の興味に没頭する一方で、
ADHDのような衝動性や多動性も見られる場合がある。
この場合、診断が複雑になり、
治療や支援も両方の特性を考慮する必要があります。
具体例で比較
ASDの子ども
電車に異常なほど詳しく、
時刻表を暗記しているが、
友達と遊ぶのは苦手で一人で過ごすのを好む。
騒音に過剰に反応する。
ADHDの子ども
電車に興味を持ってもすぐに飽き、
教室でじっと座っていられず、
友達と遊びたいが衝動的に割り込んでケンカになる。
結論
ASDは「社会性と反復性」が鍵であり、
ADHDは「注意力と衝動性」が鍵です。
ASDが「枠にはまった世界」を好むのに対し、
ADHDは「枠を超えて動き回る」イメージと言えるかもしれません。
ただし、実際には個人の特性が
スペクトラム状に広がっているため、
境界線が曖昧な場合もあります。


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